第11章 聖域へ
「……ここが」
アーチをくぐった彼女の第一声は感動の声だった。
先に待っていたのは、森だった。今までに見たことないほどの静かさと威厳を纏った森だった。
「……行くしかない」
ふと後ろを振り返ると闇が座っていた。もうここまで来たなら進むしかない。決意を新たに歩き出した。
上古の探索者はひたすら奥へ奥へと進む。どのぐらい時間が経ったのか分からない。そもそもこの地に時間という観念が存在するのかさえ怪しい。
ただ、分かるのは自分が何百、何千と生きている上古の息吹の中を歩いているということぐらいである。
「……!」
突然、体が重くなり歩けなくなった。
辺りの木々がザワザワとひどく騒いでいる。
「……私はローズ。……大賢者……上古の探索者……」
体だけではなく心も重くなり頭痛がし声さえも絞らなければ出てこない。これが詩にあった呪い、強き言の葉ということらしい。
「……お願い。………通して……世界の中心へ行くの。……通して……」
意識が少しずつ遠のきながらも精一杯振り絞って叫ぶ。
冷たいものが首を伝う。呪術師ではないため自分にはこの強力な呪いを払う力は無い。
「……今は無き上古の……知恵が導く……その声は心に沈み……澱む」
何を思ったのか、詩を呟き始める。
「……全ての生の火を消す……強き言の葉……それを知りし者だけが……古き者に……会える」
体がしだいに軽くなり始める。理由は分からないが、認められたらしい。
しかし、立ち上がることはできず、意識を失い、彼女の体は傾いた。
ローズの体が冷たい地面に汚されることはなかった。
彼女の心身を包んだのは果てしない闇だった。
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