第10章 太古の森
頑固な森を抜け出してから、二週間。荒涼とした大地をひたすら歩き続ける旅人。
時に休み、時に強行軍、上古の探索者はひたすら歩き続ける。体が疲れていようと心が元気である限り歩き続ける。
そのおかげか、とうとう……。
「あれは何かしら?」
ローズはふと足を止めた。少し先に洞窟らしきものがあった。
「……洞窟かも」
と呟き、また歩き出した。
近づけば近づくほどそう見える。
とうとう彼女の目の前にその姿を現した。
それは確かに洞窟であった。中は深い闇が支配していた。
「……とうとう」
思わず感慨深くなる。ここに辿り着くまでには話し切れないほどの苦労があったので感傷的になっても仕方が無い。
「よし、行こう!!」
強くうなずき、覚悟を決めて洞窟の中へ入って行く。
手持ちの秘石燃料の明かりで道を照らすが、洞窟の闇がとても濃いためあまり役に立たない。時々、バサバサと何かが飛び交う音がする。洞窟らしいゴツゴツさ。とにかくあまり行きたくない不吉な所というのが、ほんの小さな明かりで理解できた。
「……不気味。……まさにって感じ」
ぼそぼそと呟く声は洞窟内に反響し、大声になる。
休憩を入れながら歩くこと三時間、何かが彼女の瞳の世界を遮った。彼女はそれが何であるかを確かめるために走った。
それは白いアーチだった。その純白は闇に浮き上がり、美しいというよりは不気味に見えた。
彼女は、辿り着いたという感動と共に小さな不安を覚えた。
「……ここを通れば、太古の森。……もう帰ることができないかもしれない」
小さかった迷いと不安が膨れ上がり大きくなって彼女の足を止めた。
「……でも行かなきゃ。私はそのためにここにいるんだから。不安があっても私の全てを支配するほどじゃない。まだ、強い意志はある」
息を吐き、目を閉じ心に耳を澄ませる。不安ばかりが支配しているわけではない。強い好奇心もまだ存在している。そもそもこんなことは今まで幾度となくあった。その度に彼女は乗り越えて来た。今も乗り越えようとしている。
「さぁ、行きますか」
目を開け、息を吐いてゆっくりと歩みを進めた。
そして、彼女はアーチをくぐった。
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