第2章 天の祭壇 〜赤き月の日〜
 
 
 上古の探索者ロ−ズと時間を過ごした後、ハカセは出発した。
 以前、訪れたことがあったため道に迷うことはなかった。
 天の祭壇とは、天空に浮いていると言われる城に通じている道であり入り口である。
 赤き月の日に目的の場所に着かなければ意味はない。その日はケイと会ってから一週間後だった。
 旅は順調に進んだ。大変な旅だというのに切迫した様子はなく休む時は休むという無理をしない旅だった。
 そして、目的地に着いた。
 
 当日の夜。空は曇り、月を隠していた。
「……月が隠れている」
 小さな明かりで辺りを照らす。
 崩れた石柱が立ち並んでいる。その中心の石の床には円の中に月が描かれていた。年月により薄汚れた赤が生々しい。
 歴史の大家は円の上に立ち、明かりを消す。
「……」
 険しい顔で空を見つめる。雲はまだ居座っている。
 ふと一陣の風が吹きハカセの髪を揺らし、あっという間に通り過ぎてしまった。
 ゆっくりと、目線を空に移す。
「……!」
 雲が通り過ぎ、月が現れた。
 赤々と輝く満月が闇に浮き上がる。
「月が現れた。これは!?」
 目線は自分の周囲に向けられた。円が息を吹き込まれたかのように赤々と輝き、月を描く。
 光は線から漏れ、ハカセの目を眩まし、包み、そこからかき消えてしまった。
 
 残ったのは、静寂だけだった。