第4章 水華に到着
 
 
 ここは地図ではバーブルと表記されている国だが、多くの人々は海人の国と呼ぶ。この世界で一番水の民の遺跡が多く、観光として訪れる客もいたり水の民の至宝を切り出して出荷したりする。水の民の至宝は加工はできないが室内の飾りとして求める者がいるため需要はある。
 二人が訪れた水華、公的名セポネスはにぎやかな商業都市として栄えている。
 
「さすがににぎやかですね。水の民の至宝も売っていますね」
 店をちらりと覗きながら歩いている。さすが、水の民の遺跡が多いだけあってそれに関する情報や商品も多い。
「うん。でも、加工はされてないけどね。しかも水の民の至宝の周りに違う石があるし」
 ナディも周りの店を見ながら言った。売っている水の民の至宝はそれだけを切り出した物ではなく、違う石を縁取りとして一緒に切り出している。そうしなければ、切り出すことができないのだ。
「仕方がないですよ。他の石を含んで切り出さないと水の民の至宝はだめだと聞きますし」
 ハカセもそれなりに事情を知っているらしくナディの話に言葉を添える。
「うん。よく頑張ってると思うよ。今も加工ができないか研究してるらしいし。水蓮花辺りだと。水の民の至宝だけじゃなくて秘石の加工は難しいからね。下手をしたら石の持っている力を失わせることになるし」
 この世界では普通の石の他に秘石と言う不思議な力を持つ石があるが、加工の腕によってはその力を失ったり低下したする。そのため、加工する者達はかなりの技術を要求されるがその見返りとして優遇されたりする。
 そして、この国にある水蓮花、公的名エクレセポでは水の民の至宝について様々な研究がされているが、いまだうまくいっていないと言う。
「そうですね。それでこれからどうしますか?」
 ハカセは本題を口にした。観光のために来たわけではないので楽しむのはここまでにしてやるべきことをしなければならない。
「ここからずっと先に行った所に森があるんだ。その中に小さな村があってね。その村が僕らの目的地。休んで明日出発にしてもいいし、今から向かってもいいよ。それはハカセに任せるよ」
 簡単に予定を述べて最後の選択をハカセに委ねる。
「だったら、進みましょうか」
 青い空を見上げてからゆっくりと答えた。休むには早すぎるし、何より早く目的のものを見たいと好奇心が踊っている。
「いいよ。じゃ、行こうか」
 ハカセの選択で表情を締めた。
 二人は水華を出た。
 この日は当然、野宿となった。