灰色の塔の夢
 
 
 青い空に白い雲。果てしなく広がる草原。湖。
 いつもと変わらぬ風景。その中にいつもと変わらず子供がいた。
 
「……」   
 じっと前方を見つめている子供。6歳ぐらいで艶のあるマゼンタの髪をおだんごにし、上品でゆったりとした服装に右目にはブリッジ式のモノクル(片眼鏡)をしている。知的であるが、性別だけが分からない。
 ここはもう一つの現実の世界、夢である。それなのにこの子供の世界は現実と変わらぬ風景だった。
「……」
 子供は立ち上がり、空を見上げる。青い空に白い雲。変わりない風景。
「……あれは?」
 突然、変化が起きた。青空と白い雲が色を失い、灰色が世界を塗り替えていく。何かが起きている。
 子供は辺りを見回す。灰色。全てが塗り替えられていく。子供の夢が崩され、何かが入ってきて埋め尽くしていく。
 それもものすごい速さで。
 
 全てが終わり、子供は辺りを見回した。灰色の壁に囲まれた建物の中にいた。おそらく塔か何かだろう。石壁には窓一つ無い。あるのは木の扉だけ。階段があってもよさそうなのにそれも無い。
「……扉か」
 扉に近づき、引いたり押したりするがびくともしない。完全に閉じ込められたようだ。一体誰に……。
「この塔の主に会いたいのですが」
 と呟きを洩らすと目に前に扉が現れた。
 ためらうことなく扉のノブに手をかけ引くと扉が開いた。
 そこは石壁に囲まれたただの何もない部屋だった。何となく牢獄に雰囲気が似ている所だ。
 そこに人がいた。いたと言うよりもあった。少女だった。金髪の巻き毛は腰まであり、顔は右半分を隠している。服は身分が高いらしくとてもいい物だが袖から覗く手は干からび皮と骨だけだった。顔もまた皮と骨だけでほとんど骸骨と言っていいほどの不気味さであった。右腕と首には枷がはめられていた。その少女の存在は年月を感じるほどにくすんでおり、何かが取り憑いているように見えた。
 子供は恐れることなく近づき、
「ここの主はあなたですね。何かあったんですか?」
 と訊ねる。普通ならば死人に口なしで答えは返ってこない。しかし、今回は死人に口ありで返ってきたのだ。
「私はアイル・ツォルン。あなたは誰?」
 少女の声が天から降ってくる。
「ハカセと呼ばれている者です」
 少女だったものを見つめながら名乗った。
「私の友達の黒猫シャームがいないの。あなた見なかった? 見たら連れて来て欲しいの。私、動けないから」
 と声が聞こえた時、どこかで猫の鳴き声がした。
「分かりました。すぐに連れて来ます」
 ハカセは頼みを引き受け、扉をくぐった。
 
 扉の先は通路だった。猫の鳴き声が近くでする。この辺りにいるようだ。
「この辺りに」
 石の通路を歩き進んで行く。限りない通路。
……無限通路」
 ぼそりと呟き、立ち止まり耳を澄ます。猫の声がする。とても近い。背後にいるのか。ハカセは振り返った。そこに黒猫がいた。黒猫は爛々と金色の目を光らしてこちらを睨んでいた。
「あなたがシャームですか?」
 なぜか近づかず、じっとしているハカセ。猫は睨むのをやめたかと思うと突然、ハカセに襲いかかってきた。ハカセは体をずらして避け、その場を急いで離れた。
「ここにはやはり何かあるみたいだ」
 呟き、道を歩いて行く。また猫の鳴き声だ。それも複数。
「これ以上は行かない方が良さそうだ」
 扉を出現させ、この場を離れる。
 扉の先は広々とした庭だった。少し離れた所に高い塔が見える。
 どうやら塔の外に出たみたいだ。
 ハカセは様子を見るため歩き出した。
 芝生にベンチ。両側は森。歩いても歩いても同じ景色。
「違う所に行った方が」 
 離れようとした時、再び猫の合唱がした。さらに悪いことに猫達はいつの間にかハカセを囲んでいた。木々から洩れる不気味な声に殺気立った金色の目。逃げられない。
「まずいことになった」 
 言葉のわりに全く動揺している様子がない。
 猫達が一斉に襲いかかってきたが、ことごとく空から降って来た矢や剣や槍によって貫かれた。
 猫は黒い影に化ける。影は金色の目を持ち口には気味の悪い笑みと共に全て消えていった。ハカセを助けた武器は地に転がり消えた。
「大丈夫?」
 木の陰から12歳ぐらいの子供が現れた。髪はアクセサリーと両側の下にあるだんごでまとめられている。ゆったりとした長衣(ローブ)のような紺の服を着ている。顔立ちは中性的で温厚そうな雰囲気があった。どうやらこの子供に助けられたらしい。
「大丈夫です。助かりましたよ」
 感謝を述べる。子供はゆっくりとハカセの所にやって来た。
 そして、自分が先ほどいた木に向かって、
「大丈夫だよ。出てきなよ」
 と誰かを呼んだ。それに答えるかのようにひょっこりと5歳ぐらいの少年が姿を現した。しかし、その姿は妙だった。黒髪に金色の瞳で黒ずくめ。妙なのは黒色の猫耳と短い尻尾があることだった。どうやらこちらの人らしい。その少年は恐る恐るハカセの所に来た。
「……」
 じっとハカセを不安の色で見つめる。自分以外にも人がいた。大丈夫なのかという不安。ハカセはその瞳を見つめ返す。
「あなたがアイル・ツォルンの友人のシャームですね?」
 何を思ったのかハカセは彼にそう訊ねた。
 少年はこくりとうなずき、
「そうだよ。シャームだよ」
 小さな声で答えた。
「そうですか。私は彼女にあなたを捜してくれるように頼まれたんです。私はハカセと呼ばれている者です」
 二人に名乗った。
「ボクはケイ。彼にここにいるお姫様を助けるように頼まれて来たんだ。よろしく」
 にこにこと名を名乗るケイ。
 そうやって和んでいた時、それを切り裂く声がした。猫の声だ。
「来た! ここを離れよう!!」
 ケイは扉を出現させ、急いでその中に入った。ハカセとシャームも入る。
 扉は閉まり、難を逃れることができた。一難去ってまた一難。
 
「うーん、ここどこだろう。ただの石壁の部屋のようだけど」
 辺りを見回してケイが呟いた。ケイが言った通り、部屋は狭く何もないただの石壁と石床があるだけの空間。
「話を聞かせてくれませんか。アイル・ツォルンとこの塔について」
 シャームを一瞥し、座り込む。
 不気味な猫の声が上から響き、シャームはビクッと体を震わせた。
「大丈夫だよ。見つかるまで少し時間がかかるだろうから」
 ケイは上を見上げながら言う。猫の声は遠ざかった。
「ボクも知りたいな。話してよ」
 ケイもハカセの意見に賛同し、床に座った。シャームは床にペタンと座り話し始めた。
「ずっと昔、戦争がたくさんあった頃、アイル様のツォルン家は国を治めてた。平和な所だった。ツォルンは周辺の国と同盟を結び立場を守った。隣国を治めるコリエラ家ととても仲が良かった。アイル様もユリナ・コリエラという5歳年上の女の人と仲が良かった。姉妹のようだった。だけど……」
 ここでシャームは言葉を濁した。
「その続きは?」
 ケイが促した。シャームは再び重い口を開けた。
「ユリナ様のご両親が亡くなってユリナ様は女王になった。それからだった。大変なことが起きたのは。次々に同盟を破ってユリナ様は戦争を始めた。アイル様のご両親はそれを知ってアイル様をこっそり山奥にある元牢獄の塔に避難させた。ご両親は気づかれてはいけないので国に戻った。僕はアイル様の側にいた。ツォルンはコリエラに滅ぼされた。だけど、僕達は当分の間は平和だった」
 シャームは遠い目で天井を見つめていた。
「でもそれも崩れて、アイル様は塔で殺された。僕はこの目で見てた。とても怖かった。僕もその後に殺された。僕達の体は長い年月によって朽ちて消えたけど心というか魂みたいなものがここに囚われて離れることができないんだ。とくにアイル様は。僕はそんなアイル様を助けたい。でも僕だけじゃ無理なんだ」
 苦しそうに言った。
「そうですか」
 うなずき、ケイの方を見る。話をするように促しているようだ。
 ケイはうなずき、話を始めた。
「ボクはいつものように散歩をしてた。その時にシャームが現れて助けて欲しいと言うからここに来たんだ」
 簡単にいきさつを話した。
「いつものように、ですか。まるで夢の中に住んでいるみたいですね」
 ハカセの突っ込みが入る。
「その通りだよ。ボクにとってここは現実で目覚めの世界こそが夢なんだ」
 と述べる。
「……夢の人ですね」
 一言言った。ケイはそれを聞いてにこにこしている。
「そうだね。ボクはハカセ達が言う夢に住んでいる。ハカセはどうしてここに?」
「私はいつものように自分の夢にいたんですが、突然、風景が変わってここにいたんです。そして、アイル。ツォルンに会いました」
 ハカセはここに来たいきさつを話した。
 これで一通り三人の話は終わった。
「……死人は土に還れども夢は見る。想いは夢に力を与える」
 シャームに向かって夢の人は言う。
「……想い。僕はずっとアイル様と話したいと思ってた。いろいろとお礼が言いたいと思っていた。僕は捨て猫だった。お忍びで街に来ていたアイル様に助けられた。それまでずっと尻尾が短いことでいじめられていたから嬉しかった。そして今、それが果たせる」
 シャームが心の内を語る。彼のこの想いが姿を変えさせたのだろう。
 夢の人は微笑んで、
「……よかったね」
 と言った。ハカセは何か考え込んでいた。
「ユリナ・コリエラもまた想いによって変化しているのかもしれませんね。コリエラは大国であったが、度重なる戦争と重税によって人々は苦しみ騒動がよく勃発し、それによって滅んだと聞きます。女王は狂っていたとも言われています」
 考え込んでいたことを話した。ケイはじっとハカセを見ていた。何かを探っているような目つきだった。
「よく知ってるね。歴史家?」
 ケイはそう訊ねてみた。
「えぇ、そうです」
 ハカセはケイの質問に返答した。
「じゃ、歴史の大家だね。ただの歴史家だとは思えないもの。そう呼ばれているんじゃないの?」
 茶目っ気のある声で言う。
「えぇ、そうです」
 これまたうなずく。
「やっぱり。だって、ボクが来なくても大丈夫だっただろうし」
 ハカセを助けた時のことを思い出し、力強く言った。
「そんなことはありませんよ。さぁ、行きましょうか」
 ケイの言葉をやんわりと否定し、立ち上がる。
「うん」
 納得はしないが、追求するタイミングを逃したので諦めることにして扉を出し、先へ進むことにした。
 
 扉の先はアイル・ツォルンではなく、道すらもなかった。空洞だった。下には黒猫が群がっている。
「こんなの平気だよ」
 ケイは扉をくぐる。体を支える物は何も無く、ただ、落下する。
 しかし、そうではなかった。ケイの下には赤い絨毯があった。
「……不思議な絨毯ですか」
 ハカセはそれを見て、面白そうに言い絨毯に乗った。シャームも急いで乗った。
「どーするの? 下には黒い奴がいるよ。さっきの扉も消えちゃったし」
 シャームは恐る恐る先頭にいるケイに訊ねた。三人が開けた扉は消え、すっかり壁ばかりの部屋に閉じ込められた。
「こうするんだよ。しっかりつかまって」
 悪戯っ子のような笑みをしたかと思うと絨毯を加速させる。目前に壁が迫ってくる。
「危ない!!」
 シャームは衝突の瞬間、目を閉じた。ハカセは前を見据えている。恐れがない。
 しかし、衝突の激しい痛みはなく、変に思ったシャームは目を開けて驚いた。
「うわぁ、これって」
 三人の目の前には上に続く長い石の階段があった。三人は壁を通り抜けて塔の中に移動していた。さすが、夢の世界。
「……階段だね」
 ケイがシャームの言葉を続けた。
 シャームの猫耳がぴくんと震えた。何かを聞き取った。
「また来る。あの嫌なのが」
 シャームの言った通り多くの黒猫が群がってきた。かなりの数だ。一体、どこにいたのだろうか。不気味な声で鳴く。
「一気に行くよ!!」
 ケイは振り切って思いっきり速度を上げ、階段を飛んで行く。
 
 道は迫ってきては離れていく。黒猫達は階段の隙間という隙間から現れ襲ってくる。
 三人はそれを振り切っていく。ただひたすらに上へ上へ向かう。
 終わりはどこだ。扉はどこだ。どこにもない。無限階段。
「このままじゃ、まずいよ。逃げ切れないよ」
 ケイが後ろの二人に言う。猫がひっきりなしに出現してくる。これではいずれ止められてしまう。
「……アイル様」
 シャームは手を組んで呟いた。会いたい。助けたい。こんな所で諦めたくない。
 想いは夢を変える。シャームの想いは無限階段を壊した。想いが形になった。
「扉だ。降りるよ」
 絨毯を扉の前で止め、三人は降りた。
 ケイが扉を開けた。扉は軽々と開いた。
 
 石壁の部屋に鎖に繋がれたくすんだ骸。ここだけ別の時間が流れているように見えた。
「アイル様!!」
 シャームは抱きついた。シャームが触れている所から光が広がり、彼女の体のくすみが消え、骸が生命を打ち始めた。白い柔肌に太陽のごとく美しい金髪の巻き毛と紅の唇。色彩豊かになり、瑞々しくなった。15歳の少女がそこにいた。
「……シャームなの?」
 唇が動き、可愛らしい声が洩れる。
「そうだよ、アイル様。いろいろとありがとう。とても感謝してるよ。だから助けに来たよ。ここを離れよう」
 シャームは彼女から離れ、手枷に触れたが、すぐに手を離した。枷が変化したのだ。金属から人骨に。生きたアイルの後ろにいるのは死んで骸になった女だった。
「ユリナ様!!」
 シャームは悲鳴に似た声を上げた。骨はアイルの腕や首をきつく絞める。白い肌に血管がうっすらと浮かぶ。少女は苦痛の声を上げる。
「アイル様! アイル様!」
 何とかしようにも何もできない。
「彼女を捕らえているのは枷じゃなかったんだ」
 ケイが言葉を吐く。そこには驚きはなく日常茶飯事といった響きがあった。
 ハカセはじっと見据えている。
「……お前のせいだ。……恨む……恨む……恨む」
 不気味に瞳が光り、おぞましい声が響く。シャームは震えながらもアイルの側から離れない。
「恨んでいようといまいとボク達は彼女を助けに来たから解放させてもらうよ」
 ケイが動こうとした時、ハカセが腕を掴み留めた。
「ハカセ?」
 横にいるハカセに振り向く。何をするつもりなのか。ハカセは微笑みを浮かべていた。 大丈夫だと言っているらしい。ケイの腕を放し、アイルに近づく。
「あなたは随分悪いことをしたようですね。同盟を裏切り、友人や罪のない人々を苦しめました。しかし、それは時代の流れがあなたにさせたこと。あなたが悪いのではありません。あなたはただ巻き込まれただけです。今も心のどこかにアイル・ツォルンに申し訳ないという思いがあるのでしょう。ただあなたの黒い部分が強すぎてそれが歪められ謝ることができないでいるだけしょう。……どんな形であったとしても気になって仕方無いのでしょう」
 ハカセの柔らかい言葉に不気味な瞳が揺らいだ。自分を救おうとしている言葉。自分を見透かしている言葉。認めてくれようとしている響き。 
「誰かの許しが欲しいのでしたら……」
 ハカセはアイルの手首を掴んでいる手を包み、ユリナに笑んだ。
「私が許します。あなたのしたこと全て許します」
 きっぱりとした口調で言い放った。それ以外の感情はない。まぎれもなく許しだった。
「……許す……私は……許される」
 ずっと待っていた言葉。誰かに救ってもらいたかった。認めてもらいたかった。全てを許して欲しかった。誰もしてくれなかった。親族も自分の信じる神も全て。なのにこの人は自分のこの気持ちを知ってくれた。認めてくれた。
 途端、アイルを縛っていた手は離れ、骸は美しい茶髪の女性になった。緑の瞳に一筋の涙。悲しみ、後悔、恨み。全てが一筋の涙になって頬をつたう。
 ようやく解放された。ユリナは白い影になり、消えた。
「……消えた」
 ケイは驚きの声を上げた。こんなことが起きるとは予想もしなかった。
「アイル様、行こう!!」
 シャームはアイルの手を取る。
「えぇ」
 アイルは立ち上がる。二人の前には扉があった。きっと外に続いている。
 扉の前で二人は足を止めた。
「……ありがとう」
 幼さの残る笑顔をケイとハカセに向けた。隣でシャームが笑みを浮かべている。
「気をつけてね」
「お元気で」
 二人は挨拶をした。ここでお別れだと気づいている。
 お姫様と黒猫は扉の奥に消えた。
 扉が閉まった時、突然風景が変わった。
 
 青い空に白い雲。草原に湖。
 二人はそこにいた。
「戻って来られたみたいですね」
 ハカセは草の上に腰を下ろした。ケイも隣に座る。
「ユリナに許しが必要ってどうして分かったんだい?」
 ケイの脳裏にユリナの一筋の涙の輝きがあった。
「あの時代、自分の身を守るには裏切り行為となるものしかなかったんですよ。もし他に方法があればそれをとったでしょうが、時代の流れはそうはいかなかったんですよ。彼女は行動した後、自責の念に駆られたんだと思いますよ。彼女が狂ったのは王権を手に入れてからでしたから。その自責の念を許す者は誰もおらず、ただ彼女の犯したことの外側だけを見てさんざんなことを言ったんだと思いますよ」
 ハカセは湖を眺めながら答えた。
「その負の部分が黒猫として現れた。アイル・ツォルンに思う所があったため彼女はアイルの夢に現れ、アイルを縛った」
 ハカセの言葉を受けて、自分なりに先ほどの出来事をまとめる。
「そういうことですね」
 とハカセはうなずいた。
「ところで、ハカセの夢はいい所だね」
 風景を一望して言う。話題が飛んだ。
「ハカセはどこに住んでいるんだい? ボクは青歴だよ」
 ケイのその言葉に対して、
「私は白歴に住んでいます」
 と答えた。思わぬ答えにケイは驚き、喜んだ。
「隣町だ。嬉しいなぁ。ハカセのような賢い人が近くに住んでるなんて!」
 嬉しさのあまり声が高くなる。
「私もですよ」
 柔らかい笑みと共に言う。
 
 二人は互いの住所を教え合った。また会うことができるように。
「それじゃ、またね。歴史の大家」
 ケイは別れを告げた。風景が薄れている。どうやら目覚めが近いようだ。
「えぇ、また会いましょう。夢の人」
 ハカセも別れを言う。ハカセの姿も薄れ、消えてしまった。
 ケイはハカセと別れた後、去った。
 
 朝が来てハカセは目覚めの世界に戻る。
 ケイは夢の世界で自分の生活に戻る。
 全てが日常に戻る。
 しかし、再び会うことがあるだろう。なぜならこの出会いは起こるべくして起きたのだから。